KameManNen|カメマンネン
三井孝明さん

見るという営み

A BEAUTIFUL TOOL

VOL.1

三井孝明さん

大工・彫刻家

朝起きてホームセンターで材料を買って、現場へ行って作業して、夕方帰ったら次の日の段取りをして…っていう毎日が基本です。結構、東京の現場が多くて、通勤時間が大体1時間半かかるので毎日往復3時間。昨日も朝4時に起きて、雨が降ってたからここに5時に来て材料を積んで阿佐谷(東京)の現場に行ってきました。
20代とか30代前半の頃は、仕事が終わってから彫刻やったりしてたんですけど、最近は休みの日とか、現場と現場の間にちょっとやる感じですね。今は仕事で使う道具をモチーフにした作品を彫ってるんですけど、彫刻って何をモチーフに作ろうかなと思った時に、単純に自分の好きなものとか、いつも使ってるものをちょっと彫ってみようかなと思って見ると色んな発見があるんです。普段は機能性とか手に持った時の重みとか、道具としてしか見てないものを彫刻のモチーフとして捉えると、「ああここはよく見るとこういう形になってるんだな」とか。そうすると、寸法を測ってるだけでも何か全然違うことを考えたり見たりするようになるし、そういう意味での面白さもあります。たぶん絵描きが自画像を描くような感じに近いのかもしれないです。大工にしても彫刻にしても、プリミティブな作業が好きなんだと思います。木を切ったり家を建てたり、そういう行為が本能的に好きなのかな。

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「見る」ってことは、つまり想像するっていうことかもしれないです。自分だけじゃなくて、人のことも配慮して考えることが「見る」ということにつながるのかも。この仕事を始めたばかりの頃は、綺麗に作りたいとか、自分が思う格好いいものを作りたいとか、いわゆる「いい仕事」に対する先入観があって、そこを目指して仕事してたんですけど、最近は全体の空間とか空気とか色んなものを感じて、自分の中で構築させていって作ることを大事にしています。施主や建築家からもできるだけたくさん話を聞いて情報を入れて、それを自分なりに解釈して作る。常に一個一個考えを積み重ねていくような感じです。たとえばリノベーションだと、元々ある環境の制約があるんですけど、そのまま制約と捉えるとネガティブになってしまうから、「制約」という言葉は「偶然」というふうに、前向きに解釈するようにしてます。

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No.33(MBK)

昔「意味の積み重ね」が彫刻だってことを教わったんですけど、そういう意味では大工の仕事も意味と偶然の積み重ねなのかなと思ってて、その中で施主の望みをどう叶えられるかというのが腕の見せどころかなと思います。仕事を受けた時は、うーんて考え込んだりして結構苦しむんですけど、アウトプットのいいアイデアが出てきた時はやっぱりこの仕事好きだなって思いますね。